れおぱるレビュー

『うちの師匠はしっぽがない』

オススメ度 A

 

OP: B

ED: A

作画: A

わちゃわちゃ: A

 

あらすじ

 

時は大正時代。いつか人間を化かしてみたいと夢見る豆狸少女のまめだは長老の使いで大都会・大阪へ。そこで人を化かそうとするが失敗ばかりするまめだは、ある日落語家と名乗る黒髪美女の大黒亭文狐と出会い落語の世界に触れる。話術だけで人を化かすことができる落語に興味をもったまめだはある決断を下す。

引用元:あらすじ | TVアニメ「うちの師匠はしっぽがない」公式サイト

TNSK講談社/春来亭活動写真部

 

どうも!落語を取り扱ったアニメが放送される度に寄席に行ってみたい気持ちが膨れ上がり続けますよね!

れおぱるレビューです!!!

 

素晴らしいアニメでしたね!回を重ねるごとに『しっぽな』の魅力にどんどんハマっていき、気が付けば毎週今か今かと楽しみにしている自分がいた、みたいなハマり方をした作品だったので、描き方や見せ方が本当に素晴らしかったんだなと、この作品が持つ魅力の凄さをひしひしと感じてます。

 

狸が人を化かす時代が終わりを迎えようとしている中、大好きな父親の言った「そんな世の中は寂しい」という言葉を胸に人を化かす事を諦められずにいた豆狸・まめだが向かったのは大阪。

案の定人を化かせず散々な目に遭い、行き着いた先は寄席。

そこで偶然耳にした落語で次々と人が化かされてく様子や自分自身が化かされている事に気が付き...というお話。

 

まず、狸が主人公という設定そのものと、落語は落語でも上方落語という今まで我々があまり触れてこなかった落語がテーマという事で、見る前から楽しみにしていた作品だったわけですが、

まぁ、1話から好スタートを切ったというか、物語の入り方と見せ方が素晴らしいなと感じました。

人が簡単に狸に化かされなくなった時代で、落語を聞くことにより簡単にその情景が頭に浮かび正しく"化かされている"状態に陥る人間達や、まめだの様子から落語が持つ凄さというものが汲み取れ、人を化かす事しか興味がなかったまめだがこれからどっぷりハマる事になる落語との馴れ初めのエピソードとしても完璧すぎる出来に、これは凄いものが始まったなと感じるほど完成度が高すぎる1話でした。

しかし、それ以降の序盤から中盤に当たるエピソードは面白いんですが、地道に芸の道を極めていくようなベタな泥臭いエピソードが多く、1話で感じた期待を超えてくることはないのかなと正直感じてしまっていたんですが、

この作品が化けるのは中盤から終盤にかけてのクライマックスでしたね。

序盤から中盤にあたるベタな泥臭いエピソードの中で、散々師匠に言われてきた、寄席に関わる人達や市場で働く人達から学べという言葉が生きてくる終盤の「大黒亭とはなんたるか」というエピソードがまさに圧巻の一言で、

狸のまめだや、師匠の文狐、そのまた師匠の文鳥らが磨き上げてきた大黒亭の芸の真骨頂である生々しいほどの人間模様、その人に憑依していると錯覚するほどの、"化かされている"と感じてしまうほどの人間達の映し出し方が序盤の学べに繋がるのかと。

ベタだと思っていた泥臭いエピソードの中に後々語られる大黒亭そのものの秘密が隠されていたのかと。

もう震えが止まりませんでしたね。

それに加え、大黒亭が受け継ぐ人間よりも人間らしい人間の映し出し方に、住処や生きがいを追われ奪われ人間を憎んでいた文狐やまめだ自分が忘れたくない大切なものや、忘れたくないあの時代の人間達を見出す事で嫌いな人間達を喜ばせる落語にどっぷり浸かっていく様が回収される11.12話は天才的すぎましたね。

主人公が狸という設定や、どんどん近代化していく日本を舞台にした時代設定、取り扱っている上方落語などなど、この物語に含まれる全ての要素の活かし方が非常にうまい作品だなと感じるほどに終盤での描き方は素晴らしかったので、ベタな作品だなという印象から、忘れられない天才的な作品へと印象がガラッと変わりました。

 

また、各エピソードで描かれる上方落語の数々の映し出し方も非常にうまかった印象で、

昭和元禄落語心中』のようにフル尺の落語をどこかのタイミングでやってほしいなみたいな願望は常にあったんですが、各エピソードで描かれる落語の数々は、要点を掻い摘んで描いているので、少しの尺でも話を理解できてしまうほど映し出し方が良く、それがあることにより馴染みのない上方落語に対する興味が無限に湧いてくるようになっていたのも素晴らしいなと心底感じましたね。

上方落語は笑い話が9割というのを何処かで聞いたことがあるんですが、この作品もその上方落語に則るように、最終的に笑い話や笑顔で終わるエピソードが多く、見ているだけで嬉しい気持ちや楽しい気持ちで満たされるような方向性は人を幸せにできる素晴らしい仕上がりになっていました。

そして、上方落語を応用したようなギャグパートが随所に見受けられたのも上方落語に対する興味が湧くきっかけとなっていると強く感じるほどの出来で、個人的にお気に入りなのは第9話の牛ほめのようなギャグパート。

その先の展開やオチが大体予想できてしまうレベルで落語らしさを感じるギャグパートなのにも関わらず、実際にそれが映し出されると大笑いできてしまうほど素晴らしい応用がなされており、こういう些細なシーンからもこの作品の凄さを感じ取れましたね。

漠然とした落語に対する敷居が高いイメージを払拭したい。

というような想いが込められているようですが、その想いが我々にしっかり伝わり、上方落語に対する興味がふつふつと湧いて止まらなくなる感情に実際に持ってきているのはすごいなと改めて感じますね。

私も上方落語に対する興味が止まらなくなり、辻占茶屋などの上方落語らしい落語をYouTubeとかで見たりしましたしね。

あと、忘れてはいけないのがCパートにあたる『しっぽなのしっぽ』コーナー。

エピソード内に登場した落語などをわかりやすく解説してくれるこのコーナーがあったからこそ、各エピソードに対する理解度も跳ね上がり、それがあることによってエピソードそのものの面白さや落語に対する興味も跳ね上がっていく感覚は、許された時間全て作品そのものを盛り上げてくる愛を非常に感じられるので楽しめました!

 

落語そのものに対するリスペクトが非常に感じられる作品であるが故、それを見ている我々が落語に対して興味を膨らませていく様は自然なことですね。

それに加え、物語そのものも非常に面白く、序盤で撒かれた伏線や布石の数々が終盤で鮮やかに回収されていき、大黒亭まめだが完成していく様は圧巻の一言。

欲を言えば四天王編のテンポが早すぎる印象があったので、そこをもう少しじっくり描いてくれればそこで感じる面白さを倍以上に膨らませられたと個人的に思うので、そこだけが惜しかったかなと感じますが、振り返ってみると全体のクオリティが非常に良い作品ですので、楽しめますよ。