れおぱるレビュー

『やくならマグカップも』

オススメ度 A

 

見るならあらすじも

 

高校入学当日、亡き母が作ったマグカップを並べ自己紹介する姫乃。すると、母の作品を知っていたクラスメイトの三華に陶芸部に連れて行かれる。知るはずのない土の匂いに心を惹かれた姫乃は、初めての陶芸に挑戦することにー。

引用元:STORY|TVアニメ&実写『やくならマグカップも 二番窯』

©プラネット・日本アニメーション/やくならマグカップも製作委員会

 

どうも!見るならこのレビューも...!

れおぱるレビューです!

 

2クール、全24話。

最近増えてきている、前半にアニメパート、後半に実写パートという、30分アニメを流す時代は終わった!?と思わせてくるような新しい形のアニメでしたね。

 

この作品で取り扱っている陶芸に然り、少々おじさんみを感じられるようなテーマを取り扱っているアニメは伸びるという法則が近年のトレンドでありますが、このアニメももれなく面白かったですね!

 

ですが、そう感じられるのも全話通しての感想であり、正直このアニメの序盤では、それを感じることはできませんでした。

というのも、こういう多くの人が知らないジャンルを取り扱うアニメの鉄則として、誰もがわかるように序盤では基礎を描くという事をやるんですが、本作では、その基礎の描き方というものが非常に薄く感じられ、大丈夫か?と思ってしまうほどのもので、正直不安しか感じられませんでした。

ただ、不安を感じたのはこの序盤だけであり、それ以降のエピソードに然り、全体的な物語というものは非常に素晴らしかったと言えます。

 

まず1クール目。

陶芸家である母の死後、両親の故郷である多治見に引っ越してきた姫乃が、母が残したマグカップが繋いでくれた縁で陶芸部に入部し、陶芸というものを知っていく物語。

先程述べたように導入部分は不満しか残らないような残念な出来でしたが、それ以降の物語が非常に素晴らしい。

陶芸というものに慣れ始めた頃、父が大事に使っていた茶碗を割ってしまい、自分が作った茶碗をプレゼントするわけですが、それがなかなか使ってもらえず悔しい思いをし、それを糧に陶芸に真剣に向き合っていくエピソードがあるんですが、これが見たかった!と声を大にして言いたくなるような向上心を感じさせるこのエピソードが非常に素晴らしく、また、その後描かれるコンクールに向けた作品作りにも、あの時の茶碗で感じた悔しさというものが反映され、見た人が自然と使ってみたい!と思えるような作品を作っていくストーリーが非常に美しかったですね。

それに加え、亡き母が残したマグカップに然り、旧校舎に残した巨大なオブジェも姫乃が陶芸家として陶芸に真剣に向き合っていく大切な要素として描かれており、伝説の陶芸家とまで呼ばれた母を持つ主人公としての設定を無駄なく活かしているなと感心させられるほど、素晴らしいものが描けていたと思います。

 

そして、2クール目。

これはもう最初から最後まで素晴らしい!の一言。

コンクールで1位を取れなかった悔しさから、より一層陶芸に向き合うことを決意した姫乃の成長物語。

これを美しいと言わずして何を美しいというのかと、声を荒げたくなるような素晴らしいストーリーが描かれていましたね。

1クール目で味わった、茶碗の悔しさ母親の色を借りて挑んだコンクールの悔しさ

2クール目で描かれる、悩んでる仲間がいたら一緒に悩み、背中を押し、共に歩んでくれる仲間の存在

2クール通して描かれる全ての要素が、豊川姫乃という1人の人物を作り上げており、陶芸家としてではなく、1人の人間として成長していく様というものが徹底的に描かれており、本当の美しさというものはこういうことを指すのか...と感じさせられてしまうほどの出来、本当に素晴らしかったですね。

 

それに加え、2クール目に入ってからより一層深く描かれる陶芸部の人達のエピソードも非常にいいものでした。

特に印象に残っているのは、5話〜9話で描かれる十子先輩の物語。

有名な陶芸家を祖父に持つ十子先輩は、どんなにいい作品を作っても昔のように祖父に褒めてもらえないため、祖父を振り向かせるような作品というものに執着していたわけですが、ある日悩みに悩み、陶芸部員の支えもあり、自分の作りたいものを作ろう!と決心するエピソードでしたが、アートというものに必要な、誰かを喜ばせるものではなく、まずは自分が楽しめるような作品を作り、それをすることによって前者も自ずとついてくるようなものが描けていて、もう感動しましたね。

十子先輩の祖父がどんな本心で十子先輩の作品に触れてこなかったなどの結末は是非本編で確認して欲しいので、ここでは触れませんが、こういう陶芸を取り扱った作品らしく、陶芸を絡めた殻を破る話は本当にお見事で文句の一つも浮かびません。

 

物語の序盤はもう少し基礎を描き、それ以降の応用に繋げてほしかったという、序盤に対する不満というものは感じてしまいますが、それ以降の物語が圧倒的に良く、久しぶりに体感したスロースターターのアニメに興奮してしまいました。

アートというものは、常に身近なものからヒントを得て完成に至るというものが徹底して描かれていたり、一つ一つの設定をちゃんと活かしきる個々のエピソード、2クール通して描かれる豊川姫乃の成長物語。

どれをとっても面白い!と思わず言ってしまうような『やくならマグカップも』。

本当に素晴らしかったですね。

実写パートにおいては、個人的な意見として、正直いらない。アニメパートを30分にして1クールで放送してほしかったというのが本心ですが、実写パートを含め、『やくならマグカップも』が完成していることは事実ですので、実写パートを含め愛したい作品でありました。

 

陶器が使えば使うほど味が出ていいものになるというのなら、このアニメも話数を重ねれば重ねるほどいいものになるという、陶器に準えた?素晴らしいアニメであります。

描いているものの良さがとにかく光る素晴らしいアニメでありますので、陶芸を知るきっかけに是非いかがでしょう。