れおぱるレビュー

『月とライカと吸血姫』

オススメ度 B

 

あらすじ

 

1960年、世界を二分する両大国の宇宙開発戦争が激化するなか、宇宙飛行士を目指す青年レフ・レプスは、ある日、極秘の任務を命じられる。
それは人類初の有人飛行を前に、実験体として吸血鬼を宇宙に送る計画――『ノスフェラトゥ計画』のため、イリナ・ルミネスクという少女を飛行士として訓練すること。
吸血鬼は『呪われし種族』と忌み嫌われ、恐れられる存在。不安を抱きながらも、レフは彼女のいる監房へと向かう――

引用元:第1話 ノスフェラトゥ計画 | TVアニメ「月とライカと吸血姫」公式サイト

© 牧野圭祐小学館/「月とライカと吸血姫」製作委員会

 

 

どうも!夢を叶える物語はいつの時代も美しいものですね!

れおぱるレビューです!

 

ソ連アメリカが宇宙開発の覇権を争い世界が二分化した冷戦時代がモチーフとなっている本作。

主人公達が属する国はソ連がモチーフとなっており、史実に基づいた物語+α、創作物でしか描けないような吸血鬼の存在を組み合わせた物語が面白かったですね。

この物語で大きく描かれるテーマは2つ。

実験体である吸血鬼・イリナを宇宙に送り出すこと

候補生補欠であるレフを候補生に戻し、イリナと約束した宇宙へ送り出すこと

でした。

この2つのテーマを描くために、必要不可欠になるのが、レフとイリナの尊い関係性であるわけですが、この点においては申し分ないほど徹底的に描かれており、物語序盤で期待していた関係性が期待通りに描かれ、「2人"が"夢を叶える物語」から、「2人"で"夢を叶える物語」として物語が展開していく様は美しさすら感じました。

 

①のテーマについてですが、これは創作物らしく別の種族が実験体となり、実験体を宇宙に飛ばすために候補生補欠のレフが二人三脚で祖国の夢、イリナの夢に全力で走っていく部分ですが、ここで描かれる時代に打ち解けていくイリナの描写がもう素晴らしいのなんの。

始めは人間を一括りにして嫌っていたイリナでしたが、自分に対して真剣に向き合ってくれるレフという人間を目の当たりにし、次第に心を開いていく様子は古き良きヒロイン像というものを感じさせ、それに加えて教科書に載せていいレベルのツンデレでもあるので、2人の関係性というものが物語が進むにつれ尊いものになっていく様を堪能できました。

それに加え、第4話で描かれたお互いが宇宙を志した理由というものが語られる話により、より一層関係性に深みが増し、②のテーマにも繋げていけるようなストーリー運びは無駄がなく、本当にいいものが見れたなと思えるような出来で満足しました。

 

②のテーマですが、①のテーマ同様美しさを感じられるほど無駄がないストーリー展開でしたが、ここでやや失速してしまったかなというのが正直な感想です。

はっきり言ってしまうと、物語に非情さというものが足りなかったかなと感じます。

イリナの帰還後、イリナを宇宙飛行士にした功績が認められ、見事候補生に返り咲いたレフでしたが、それと並行してチラつかせ描かれる、国の秘密を知りすぎた実験体イリナの処分。

祖国の宇宙開発という部門に多大な情報を持ち帰り、人間の新たな一歩に貢献したイリナの処分にもちろん反対するレフがここで描かれるわけですが、イリナの処分のチラつかせというものが長引きすぎて、どうせ処分されないんでしょ?という空気感でクライマックスを迎え、案の定処分されないまま2人が認められるというエンドは物語の面白さという部分において決定打に欠けるなという印象を持たざるを得ない部分だったと思います。

この物語の舞台になっているのは、真実が嘘になり、嘘が真実になるを徹底してきた当時の非情なソ連であるので、何もかもが思い通りにことが進むを描くよりは、時代背景や今現在の作品の流行りに合わせ、イリナの死を乗り越えイリナが叶えられなかった夢をレフが叶えにいくようなアツいストーリーにしても良かったと思います。

イリナを死なせないどころか、最終回では全世界に認めさせるという展開は、この作品の優しい部分でもありますが、処分をチラつかせてきたからには視聴者もそれなりに覚悟を持って見ているので、もう少し非常になっても良かったんじゃないかと個人的には思ってしまい、少々残念に感じてしまいます。

 

当時のソ連を舞台に、存在しないモノにされてまで夢を追い続けるイリナ、時代背景に準え、創作物らしい別種族として批判されながらも懸命に生き、切なさや苦しさを描きつつ夢を叶えていくヒロイン像に然り、イリナをモノではなく1人の人間として扱い、この世界は間違っている!と全世界に向け発信するレフの度胸など、平成を感じるような美しい物語ではありましたが、令和を感じさせるような優しく非情であるアツい物語というものには至らなかったので、割と低い評価にはなりましたが、この令和の時代に第一線に立ち、今期のヒロインレースを爆走するCV:林原めぐみさんなど、平成の美しきラノベを感じられることも事実ですので、見てほしいなと思います。

自分たちが乗るのは、人を殺すミサイルではなく、夢を乗せたロケットだ

20世紀に誰もが夢見た宇宙を目指す物語。

史実に準えた物語と、創作物でしか描けない物語、両方が上手く組み合わさって非常に面白い物語が見れますので、是非。