『ブルーピリオド』
オススメ度 A
あらすじ
夜な夜な友人と渋谷の街に繰り出すヤンキーにして、昼は成績優秀の高校生。矢口八虎はそんな毎日に空虚さを覚えていた。美術部の部室で出会った一枚の絵は、八虎に描くことのワクワクをもたらす。常に感じていた渋谷の「青」が表現出来た時、初めて覚える生きてる実感。「藝大一択?」八虎の眼前に進路は大きく開かれた
©︎山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会
どうも!絵が上手くなって自分が納得のいく美少女を山ほど描いて自己満に浸りたいですね!
れおぱるレビューです!
美術というテーマを取り扱った作品でした。
今まで、美術というものに微塵の興味も湧いてこなかったので、正直ハマるかな?という思いで見始めた本作でありましたが、やはりアニメの力というものは物凄いですね。
どっぷりハマってしまいました。
ある日、自分が感じた青い渋谷というものを美術の時間で絵にし、それが伝わったことで絵を描くことの面白さに気付き、美術部の3年生の作品を見て美術の凄さを知った八虎がいつしか藝大を目指すようになる物語。
スポ根に通ずるようなアツさまで感じるものがしっかりと描かれており、非常に面白い物語でした。
まず、美術との馴れ初め。
自分が表現したかったものが下手ながらも他人に伝わり、美術の先生に褒められたことで絵を描くことの面白さというものを描いた導入から始まったのですが、この描写が本当に丁寧で非常に良かったと感じます。
誰しもが好きな事というものを持っているとは思いますが、その好きな事を好きだと気付いた瞬間というものは、世界が果てしなく広がっていく感覚すら感じ、いろんなものが新鮮で初めて触れる何もかもが楽しいと感じる感情がしっかりと描かれており、やはり物語の導入というものはこういうものでなくちゃ!と思わされるような良い導入でした。
それに加え、美術部の先輩・森先輩の作品を目の当たりにした八虎がもっと美術を勉強したい、上手くなりたい!という感情の元、家の事情も重なり、日本一受験倍率が高いと言われる藝大合格を目標に頑張っていく物語が導入から描かれていくわけですが、ただ単に高い目標を持つだけではなく、目標を必ず達成するべく、他の人と比べて技術などが不足している部分を血反吐を吐くような努力を積み重ね、確実に埋めていく描写も非常に良かったですね。
好きなことを全力でやる努力家ほど怖いものはない
好きなことに1番ウエイトをかけることは当たり前
という美術の先生の言葉の下、自分よりも先に美術を始めた人たちとの技術の差を埋めるべく誰よりも努力し、それが結果となって現れていく様はまるでスポ根のようなアツさを感じ、面白いとしか言えませんでした。
そして、八虎の努力は美術部内なだけには留まらず、藝大に絶対合格するために入学した予備校でも存分に発揮されます。
美術部員と比べ、全員が藝大を目指してる予備校内では、技術や経験の差というものが露骨に現れ、八虎は何度も挫けそうになりますが、常に八虎が成長するためのアドバイスをくれる先生の存在であったり、全員が刺激を与え、全員が影響されあうというような仲間でありライバルでもある予備校生達の描写も非常に上手く、美術というものの奥深さだけでなく、一つのことに対して全力で取り組む青春の輝かしさなどもしっかりと描かれていて、これまた非常に面白かったですね。
この美術部と予備校で培ってきた技術や経験が存分に生かされる、藝大の試験も素晴らしいものがありました。
特に予備校では、藝大に受かるための技術や美術そのものの奥深さというものをみっちりと叩き込まれていたので、肝心の試験本番ではその学んできたものを総動員して戦っていく様子というものがしっかりと描かれており、八虎の努力が手にとるようにわかる感動すらをも感じる事ができました。
そして何よりも、この試験で描かれていた空気感というものが非常に素晴らしかったですね。
私は、藝大受験などしたことは無いのですが、試験会場内に漂う張り詰めた空気や、非現実感などがまるでその場にいるかのようにひしひしと伝わってき、こっちまで緊張でお腹が痛くなってくるような描写にはシビれました。
この空気感だけでも十分見応えがあるにもかかわらず、試験内容も今までの経験と技術、そして血反吐を吐くような努力を総動員したものが描かれているんですから面白いとしか言いようがありません。
全体的に無駄がなく非常に素晴らしいものが描けているなと本当に感心させられました。
ただ、ひとつ気になる点として、
テンポの速さが目立ってしまっているんじゃないかなと感じます。
例えば、美術部編が他の描写に比べて極々僅かであったり、初めは美術の道を猛反対していた母親との和解など、もう少し掘り下げる事ができたら格段に良いものになったと思えるような描写が浅いというか、どこか淡々と進んでいるように感じ、非常にもったいないなと素直に思いました。
美術部の先生も八虎に美術の楽しさを教えた第一人者であるので、美術部で学べた事などは本編で描かれてる以上にもっとあったと思います。
美術の技術などには直接結びつきはしませんが、母親との和解に時間をもう少しかける事ができていれば、藝大受験当日に頑張って!と送り出す母親の描写にもう少し深みを持たす事ができ、感動を何倍にも膨れ上げる事ができたと思います。
こういう細かいところの掘り下げの浅さというものが少し引っかかったので、この辺は残念かなと感じてしまいます。
全体を通してみると、テーマに寄り添ったものというものがちゃんと描かれており、今まで理解し難いなと思っていた美術という世界に表面的な部分だけでも知れた気がして、美術館に行ってみたいなと感じるような素晴らしい作品で、それに加えて藝大受験という知らなかった世界を知ることもでき、非常に良い作品を見る事ができたなと感じる事ができましたが、
もう少し掘り下げる事ができた箇所の掘り下げの浅さなど、物語としてもう少し詰めることができた部分が気になるというのも事実ですので、Aという判断に至りました。
ただ、このアニメを見て、原作ではもう少し深掘りされていたのでは?藝大受験後のその後が見たくて仕方がない!と思わされることもこれまた事実であるますので、原作に手を伸ばして見ることも全然ありだと思います。
あと、藝大受験ではヌードをテーマにした絵を描けるそうなので私も藝大受験をしてこようかなと考えていたりいなかったり...
とにかく非常に面白いものが見れたなと満足できる素晴らしい作品でした!